第2章(11)風呂に浮かぶと気が巡る

 歳をとって風呂に入っていられるようになった。若い頃からのぼせ症だった私はいつも汗かきで風呂嫌い、温泉なんて1分も無理で、外科医の間は短時間のシャワーが普通だった。それが漢方でのぼせが落ち着くとともに、だんだん風呂に浸かっていられるようになった。外科を引退した今では毎日20-30分間の風呂が一番の楽しみのオッサンである。

 日本は水が豊富でいつも手を洗って毎日風呂に入る。低気圧でひどい頭痛に悩まされても、風呂に浮かべば気圧性頭痛は鎮まるものだ。湯に浸れば血流とリンパ流は重力の呪縛から放たれ「気」が巡るようになる。血流が増えれば免疫細胞は全身を巡回する。さらに37度以上のお湯はウイルスや細菌の活性を落とし免疫細胞は活性化してくれる。古来から日本で感染症の大流行が少ないのも当然だろう。

 かつては湯治の文化があった日本であるが、欧米文化の浸透とともに簡単にシャワーで済ませる若者が増え、国内旅行でなく欧米リゾートを楽しむ文化ができた。松江市と出雲市の間にある玉造温泉は日本最古の温泉として知られている。

 私がよくお邪魔するのは玉造温泉から車で30分ほど東に移動した広瀬町の鷺の湯温泉で、日本一の庭園として知られる足立美術館と一緒に楽しめる名湯である。コロナの時代に出雲を訪れてゆっくり湯治をするのはなかなか贅沢だ。


漢方対談「湯治で街おこし」

https://youtu.be/y9M2iH7Lvys

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